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PILGRIM LEAGER

(ピルグリム・イェーガー)


著者 冲方 丁(著者)
伊藤 真美 (イラスト)
出版社 少年画報社
掲載誌 ヤングキングコミックス
価格 550円[税込]
備考 1〜4巻発売中

★ あらすじ ★

 時は、16世紀ヨーロッパ。
 イタリア・ルネッサンスが花開くとともに、絶え間ない闘争が繰り広げられる時代。

 ナポリのとある都市に、霊験あらかたなる力を持つ2人の女芸人、アデールとカーリンがいた。
 彼女たちは修道院を脱走した罪を許されるため、免罪符を求めて旅を続けていた。

 同じ頃、ローマではローマ・カトリックの滅亡を予言する『フラーテの予言』をめぐってひそかな戦いが始まろうとしていた。
 予言を成就させようとする『七つの大罪者』とそれを阻止しようとする『三十枚の銀貨』の戦いは、やがて何も知らないアデールとカーリンの元にも逃れられぬ波紋を及ぼそうとしていた。

 (公式HPより抜粋)

 

 注意:ここから先の感想のようなものは、非常に宗教に対する主観などが含まれています。
 宗教、野球、政治は喧嘩の元らしいので、そのへん敏感な人は見ないで下され。注意終わり。









 近頃当たり漫画続出の中で、ぬきんでてステキで歪だったので感想のようなものを書きたくなってしまいました。

 『キリスト教と異教徒』のような対立図式的漫画は他に『HELLSING』がありますが、やけに方向性が似ています。
 やはり両方とも『愛する主のためなら敵は抹殺』という大前提があるからでしょう。

 しかし違います。やっぱり。画風とか描写とか時代とかそういうことではなくてです。

 結論から言ってしまいましょう。
 『HELLSING』はカミングアウトした『キリスト馬鹿一代』。
 『ピルグリム・イェーガー』は隠れ『キリスト馬鹿一代』なのです。





 何故「隠れ」なのか?それはひとえに、この時代背景がなせるものなのでしょう。

 『どんな悪事を行っても金貯めて『免罪符』を買えばオールOK!』な風潮や、宗教改革の流れ(でいいのかな?そのへんは世界史やった奴にでも聞け)によって、いい加減『自分達の愛情は決して主には届かない』事を理解し始めてるところにあるのです。

 HELLSINGのように『とりあえずムカつく他教徒とバケモンは鉛食らわしとけ』という『主への愛』とかそういった要素から全く離れたキリスト物もそれはそれで、清清しくて非常に良いのですが、

 『今まで愛してきた者が自分を全く愛してないと知ってかなり殺伐』

 『てゆーか?自分特に愛してないけど?信じなきゃ殺られちゃうし〜』


 という雰囲気が物語と世界観に根付いている今作もそれはそれで非常に渇いてて良いのです。

 遠藤周作なんかの作品とはまた一線を画してますね。
 あれなんかは『辛くて辛くて死ぬるような状況でもやっぱり主の愛は素晴らしい。がんばれ俺』(主観です)という雰囲気で、つまり本気のキリスト教徒の小説ですね。

 他を読んだことないのでようわからんのですが、本気の人たちが書くキリスト小説ってだいたいこうなんでしょう。

 『愛は盲目』などとよく言われますが、結局本気の人たちが書くと『愛ゆえに苦しまねばならぬ』描写がほとんどで、結局それは『馬鹿一代』ものになってしまうわけですね。


 『馬鹿一代』ものが悪いとは言いません。愛を貫けばよろしかろ?





 でも『心の商売』ですからね。宗教ってのは。
 自分の心を売り渡してしまえば残虐だろうが非道だろうが関係ないですもん。

 逆に心の平穏を買おうと思ったら金かかりますわな。
 『イワシの頭も信心から』って言うぐらいですから紙くずだって高額で売れますわ。

 信じなければ力で抑えられる。『魔女狩り』ですね。
 信じなければ村八分される。
 信じようと思ったら誠意を見せなければならない。(労働、金、兵役)

 恐怖と困窮におびえて、それでも神は何にもしちゃくれない。殺伐としますわ。そりゃ。




 ・・・・やっぱりキリスト教って力と恐怖と金で大きくなったんだなぁ。




 そんなことを考えさせてくれるこの時代の風俗。社会情勢。知るのにはもってこいの資料ですな。

 かなり殺伐とした感じですが、多分誇張はないでしょう。





 閑話休題。今作も魅力のもう一つ。それは『トンでも歴史』というものです。

 とりあえずあるだけ上げてみましょう。笑っちゃうのでうまく説明できません。
 そしておそらくこれからもいっぱいです。出てきます。笑います。


 ・イエズス会を作ったイグナチウス・ロヨラが特殊能力者。宙に浮く。
 見た目は陽気なイタリア人。

 ・有名なフランシスコ・ザビエルは切れ長の目を持つ美少年で特殊能力者。
 もちろん髪はフサフサでむしろロングヘアー。

 ・彫刻家ミケランジェロは破壊の手の能力を持つ能力者。霊体とか掴める。
 異端と見られないようにメディチ家にかくまわれた。

 ・アグリッパ。あのザコペルソナが重要人物っぽい位置に。というか実在の人物だったんだ。(物知らずスマヌ)

 ・パラケルスス。ついに最近の錬金ブームに乗り始祖登場。攻撃力が高いっぽい。

 ・多分ラスボスはルター。時間停止能力とかで宗教改革。(予想)


 ・・・・・・ジョジョ混ざってないか?





 買おうと思ってる人は是非1、2巻同時に買いましょう。
 1巻だけだと興味ない人は興味薄れるんで。多分。

 2巻から、かなりの歴史トンデモっぷりが垣間見れて、歴史とフィクションのギャップに笑うでしょうね。
 ていうかワタクシは笑いました。

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